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頭にコイン上の円形の脱毛班が出来る病気が円形脱毛症です。タイプとしては比較的軽い「単発型」から、「多発型」「汎発型」「全頭型」などがあり、重度の場合には全身に症状が拡がります。その治療法にもいろいろありますが、今話題の方法が局所免疫療法です。ここでは、この局所免疫療法にスポットを当ててみました。
円形脱毛症の原因
本来は体の防御機能であるCD8陽性Tリンパ球が、毛根部分の自己抗原(メラニン関連の蛋白)に誤って攻撃する自己免疫反応によって引き起こされる自己免疫疾患です。自己免疫反応の結果、脱毛部分の毛根組織は委縮し障害されますが、リンパ球反応がなくなればまた元通りの毛が再生されます。なぜリンパ球が誤反応するのかはまだ判っておらず、以前は精神的ストレスによって発症すると云われてきた病気ですが、ストレスを感じるとは思いにくい生まれたばかりの幼児にも、発症が見られます。現在では、精神的ストレスは誘因の1つではあるが、主原因は体内のアレルギーが合併などによって、自己免疫異常が引き起こされると考えられています。また、肉体的ストレス、ウイルス感染なども誘因の1つとされます。体内に別のアレルギー症状がある場合、例えば花粉症が酷くなる一方で円形脱毛症が治癒すると云ったような、アレルギー同士が相互に関与していると思われる症例も多くみられます。
アレルギーを持っていない場合は、ストレスなどによって自己免疫異常が一時的に発生して脱毛に至ったと思われます。ストレスやプレッシャーが無くなれば治癒するので、短期(6ヶ月程度)で完治することが多いようです。
円形脱毛症の患者の40%以上がアトピー素因を持つと云われ、54%が本人や親兄弟にアトピー素因が認められるなど、アトピー性皮膚炎と円形脱毛症には密接な関係があるようです。
円形脱毛症の治療法の種類
治療法選択ポイント
- 分類や病状の進行度によって選択されます。
- ステロイド局所注射と局所免疫療法が有効とされ、推奨されています。
- ステロイド点滴・内服には副作用のリスクがあり、小児には適用されません。
治療法 |
ステロイド局注(副腎皮質ホルモン) |
適用対象 |
成人の円形脱毛症 |
優位性 |
一般的に推奨され、高い水準の発毛効果があるとされています。 |
概要 |
固定期の成人円形脱毛症に実施されます。頭部の脱毛班にステロイドを直接皮内に注射します。炎症を抑え、自己免疫性疾患の症状を改善します。 |
治療法 |
局所免疫療法 |
適用対象 |
全ての円形脱毛症、特に広範囲に脱毛が見られる方 |
優位性 |
一般的に行われ、多発型、全頭型や汎発型の第一選択とされます。ステロイド治療による糖尿病や高血圧などの副作用リスクはありません。 |
概要 |
人工的にかぶれをおこす化学試薬(SADBEやDPCP)を脱毛部に塗って、皮膚炎をおこすことで、免疫反応を作用させます。これで毛根での自己免疫反応を抑えて、毛根を再生させます。治療は1~2週で1回程度行います。 |
治療法 |
ステロイド内服薬(副腎皮質ホルモン) |
適用対象 |
全ての円形脱毛症 |
優位性 |
ステロイド治療には、高い発毛効果があるとされます。内服のため、注射と比べて痛みを伴いません。 |
概要 |
脱毛面積が頭皮の25%以上の進行期の第一選択で使用されることがありま す。炎症や免疫機能を抑える効果があり、抗アレルギー薬などと併用される場合もあります。 |
治療法 |
ステロイド外用薬(副腎皮質ホルモン) |
適用対象 |
全ての円形脱毛症 |
優位性 |
他の治療法と比べて、比較的安全性の高い治療法です。 |
概要 |
炎症や免疫機能を抑える効果があり、患部に直接塗ります。抗アレルギー薬などと併用される場合が多いです。 |
治療法 |
ステロイドパルス療法(副腎皮質ホルモン) |
適用対象 |
発症後早期の成人で、特に重症の円形脱毛症 |
優位性 |
脱毛症が急速に進行した重症の方には、高い効果が確認されます。 |
概要 |
内服の10~20倍の大量のステロイドの3日間連続点滴を1クールとして、期間をおいて1から3クール行います。免疫反応を抑え、自己免疫疾患を改善します。 |
治療法 |
抗アレルギー薬 |
適用対象 |
アトピーによる円形脱毛症 |
優位性 |
ステロイド治療で生じる糖尿病や高血圧などの副作用はありません。 |
概要 |
第2世代抗ヒスタミン剤の投与によって。アレルギー症状を改善し、脱毛範囲の縮小を促します。他の治療法と併用されることがあります。 |
局所免疫療法とは
円形脱毛症の局所免疫療法は、意図的にかぶれを起こして治療を起こすと云う、今では世界標準になっている治療方法です。でも、日本ではまだ認可されておらず、日本で受ける場合には保険適用外で、自費治療となります。
治療方法
① 感作
まず第一段階の治療として、試薬のSADEやDPCPを使って、身体に認識させます。自然界には存在しないこれらの試薬を塗布して24時間放置しておくと、その部分が1~2週間後に赤く腫れてかぶれれば、リンパ球が試薬を認識したと判断されます。これを感作といいます。
② 判定
感作を確認後、第2段階の治療に移ります。試薬をどのくらいの濃度にするのが適当かを判定する作業として、最初は2万分の1程度に薄め、2~3週間に1回の割合で塗布して、その効果を見ます。この時、人工的にかぶれを引き起こすことで、毛根を攻撃するリンパ球の作用を抑制して、発毛を促します。
③ 継続
濃度を決めたら、2~3週間に1回の割合で患部に塗布して、治療を継続します。2~3ヶ月後に発毛効果が確認できたら、継続して塗布するようになります。ある程度生えてきたら塗布の回数を減らしたり、効果が見られなければ長期間の治療になることもあります。尚、月に1度、必ず医師による経過確認をしてもらいましょう。
局所免疫療法はメリットが多い
局所免疫療法は有効性が高く、内服薬や外用薬治療で効果が無かった人にも、この局所免疫療法で効果が得られることが多いようです。また、内服薬で見られるような副作用もほとんどありません。ただ、保険適用外のため、自費負担の必要がありますが、治療費は1回1,000円から3,000円と、それほど高額ではありません。治療期間は半年から1年くらいと即効性ではないので、長期間かけて治療が行われます。円形脱毛症のタイプには単発型や多発型や全頭型や汎発型などがありますが、どのタイプにも効果的と云われています。また、ステロイドなどの使用で副作用があって改善出来なかった方や、他の治療方法で改善が見られなかった方にもおススメです。女性はもちろん、円形脱毛症の子どもにも有効とされ、治療を受けた多くの方々が効果を実感し、効果が出やすい方法と今話題になっています。
局所免疫療法が合わない方も稀にいます
一般的には有効性が高い治療方法と云われていますが、体質に合わない方も稀に見られます。かぶれを引き起こすのですから、全身性接触皮膚炎になることもあり、アトピーがあれば症状を悪化させることもあります。もしこのような症状が出た場合は塗布を中止して、副腎皮質ホルモンなどの治療に切り替えることが必要になってきます。必ず改善するとは限らないし、一時的にしか効果が出ないで、その後は治療を続けても改善しなかった例もあります。ですから、局所免疫療法は体質に合うことが重要で、副作用のない治療方法で行うなら、ドライアイスを使った凍結治療や漢方治療などがあります。
局所免疫療法を受ける場合は、皮膚科や発毛専門のクリニックを受診すれば、安心して治療が受けられます。
円形脱毛症診療ガイドライン
推奨度B:勧められる
- ステロイド局所注射
- 局所免疫療法
推奨度C1:行っても良いが十分な根拠がない
- ステロイド内服
- ステロイド外用
- 点滴静注ステロイドパルス療法
- 第2世代抗ヒスタミン内服
- セファランチン内服
- グリチルリチン、メチオニン、グリシン複合剤(グリチロン)
- 塩化カルプロニウム外用
- ミノキシジル外用
- 冷却療法
- 直線偏光近赤外線照射療法(スーパーライザー療法)
- PUVA療法
- カツラ
推奨度C2:行わない方が良い
- シクロスポリンA内服
- 漢方薬内薬
- 精神安定剤内服
- アンスラリン外用
- 星状神経節ブロック
- 催眠療法
推奨度D:行うべきでない
- 鍼灸治療
- 分子標的治療薬
体験談(30代女性)
小さい円形脱毛症がいくつか出来ては治りを繰り返していましたが、転職失敗を契機にストレスから、抜け毛が酷くなって3ヶ月くらいで頭皮と体毛がほぼ抜けました。処方箋によるローションの効果がなかったので、初めて保険外治療を考えるようになり、別の皮膚科に相談しました。先生はSADBEとステロイドを薦めてきましたが、ステロイドは副作用として糖尿病の心配があり、軽いアトピー持ちでもあったので、局所免疫療法を選びました。根気のいる治療で3年経ちました。生えていない場所が残り10%くらいまでに回復しました。治療は継続中です。
局所免疫療法まとめ
円形脱毛症は、痒みや痛みなどのように日常生活に障害を及ぼす程のものでないため軽視されがちですが、頭髪や体毛を全て失うと云うことは本人にとっては、大きなショックとなります。それがきっかけで、ひきこもりや他人の視線を気にするあまり視線恐怖症や対人恐怖症になるケースも多くあります。それがまたストレスとなって治療の妨げになることもあり、治療には周囲の気遣いが欠かせません。
いかがでしたか、
円形脱毛症に悩んでいるあなた、一度、局所免疫療法を試してみてはいかがですか。
是非、参考にしてみてください。